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吉田遼平先生・大崎能伸先生の論文が「Am J Infect Control」に掲載されました。
このたび、吉田遼平先生・大崎能伸先生の論文が、2025年11月28日付で『Am J Infect Control』に掲載されました。
■論文情報
“Mathematical Model for Nosocomial Coronavirus Infection Disease 2019 Transmission and Patient Isolation in Hospital Wards: A Modeling Study”
Yasuhiro Umekage, Ryota Shigaki, Ryotaro Kida, Ryohei Yoshida, Yoshinori Minami, Yoshinobu Ohsaki, and Takaaki Sasaki.
Am J Infect Control
■研究概要
COVID-19 の院内感染対策では、感染患者や曝露患者の隔離のみならず、終末期患者やせん妄、隔離が必要な感染症などCOVID-19以外でも個室を必要とする患者の存在を考慮した病室配置の判断が求められる。
しかし、院内でCOVID-19のアウトブレイクが発生した際に、どの程度の稼働率であれば隔離体制を維持できるのかを定量的に示した研究は存在しない。
本研究では、未感染患者(S)、曝露患者(E)、感染患者(I)、回復患者(R)の4つの患者状態を考慮したSEIRモデルおよび個室と多床室の構成、重症患者による個室利用、経路不明の感染者の発生といった条件を組み込んだ数理モデルを構築し病棟稼働率を変動させ、院内隔離の可否に与える影響をシミュレーションによって評価した。
その結果、病棟稼働率が高いほど感染者・曝露者の隔離は困難となった。また、隔離方針によって隔離困難の頻度は変動し、曝露者を個室に隔離した場合は 二次感染は減少する一方で、隔離にはより低い稼働率が必要であった。
さらに、感染者や曝露者の退院が可能であれば、病床運用は容易となり感染拡大も抑制される傾向が示された。
ただし、本モデルには空気を介した長距離感染や換気、医療従事者間の感染を考慮していないといった制限があり、結果の解釈には注意が必要である。
これらの知見から、本モデルは院内でアウトブレイクが発生した際に「何床程度空ければ隔離体制を維持できるのか」を見積もる参考情報となりうる。
