2010年7月 6日

旭川の地元情報誌、「メディアあさひかわ」7月号の「ほっとインタビュー」の記事で、第51回日本人間ドック学会学術大会について紹介されました。
新たな50年に向けてスタートする「人間ドック学会学術大会」を旭川で開催
「人間ドック」とは、病院や診療所で定期的に精密検査を受け、ふだん気が付きにくい疾患や健康度などをチェックする健康診断の一種。この「人間ドック」技術の向上発展に力を尽くしている「日本人間ドック学会」の学術大会が8月26日、27日に旭川市で開催される。 この大会昨年の50回目の節目を刻み、今年、新たな50年に向けてスタートを切ることになるが、この学術大会の会長を務める吉田病院理事長の吉田威氏(日本人間ドック学会理事)に、旭川開催に向けた思いなどを聞いた。
学会は人間ドックの向上発展その使命遂行の目的で設立
―そもそも「日本人間ドック学会」とは、どういった組織なのでしょうか。
吉田 この学会というのは、日本病院会の事業の一環として、人間ドックの発展と、その使命を果たすことを目的に設立されました。その第一歩は1958年11月、日本病院会に臨床予防医学委員会が設立され、方針が決定されたことによります。
その方針に従って1959年5月、日本病院協会(現・日本病院会)が健康保険組合連合会と契約を結んで短期入院ドックをスタートした折、この事業発展のため、同7月に人間ドックを始めていた12病院に加え、試験的に実施していた3病院の研究発表会という形で行ったのが始まりです。
「人間ドック」という言葉そのものは、こんなエピソードから生まれました。それは、民政党の重鎮と呼ばれた桜内幸雄氏と俵孫一氏の2人が、東大病院に健康診断の目的で入院したときのこと。反対勢力から重病説を流れされぬようにと記者会見を開き、「今回の入院は艦船が母港に帰港し、ドライドックに上がって船底やスクリューの傷を点検したり、エンジンや機器を整備して乗組員に休養を取らせ、次の航海に備えているのです」と告げたのです。すると、これを知った政財界の重要人物が次々に入院し、健康診断を受けるようになったのですが、「人間ドック」の由来です。
―会員はどれくらいいるのでしょうか。
吉田 平成22年2月1日現在、A会員(医師)が4900人、B会員(医師以外)713人、C会員(施設・医療機関)1534施設、S会員(企業など)が19団体にのぼります。ちなみに人間ドック認定医は2769人で、専門医は470人おります。
―近年は、社会構造の変化や高齢化によって「少しでも長く快適に健康で暮らしたい」という声が多いそうですが。
吉田 そうなんです。そうした生活の質が重視されている一方で、生活習慣病やがん疾患などの予防可能な病気が増加傾向にあるのも事実なのです。また「21世紀は予防医学の時代」といわれ、学会が担う役割はますます大きいものがあると思いますので、学会は未来に、向って国民の健康増進の一助になるよう励んでいきたいと思います。
大会は主要都市で開催 予防医学の啓蒙活動も
―それでは、学会が今回旭川で開く学術大会とは、どういうものなのでしょうか。
吉田 年に1回、健診業務に携わる者の研究成果を発表する場として全国主要都市で開催しているものです。特別講演や教育講演で教養を深める勉強の場でもあり、一般公開講座では、多くの人々に予防医学の啓蒙を視野に入れた活動も行っています。
また、1984年に人間ドックの全国集計を始めて驚いたことですが、健康度の地域差が大きいことです。その後25年間の変化を見ると、しだいに地域差が縮小してきたことがわかります。かつて健康度が高いと言われていた地域が悪化の傾向をたどり、地域の特性が失われてしまったことがその理由です。ですが、一面では、私たちの活動が少しずつ浸透してきていると見ていいのではないかと思っています。
―人間ドックの普及に伴い、くりかえし訪れる受診者の割合は全体の70~80%を占めるようになりました。
吉田 その結果、受診者の平均年齢が40歳代から50歳代へと移行したのですが、ただ昨年の学術大会では、60歳以上の 受診者が増え、30代の減少により順位が逆転したという報告がありました。
分析結果によりさまざまな要因が考えられ、その対策として心身両面にわたる対面式指導の必要を説いたり、適応力を身につけさせることが健康改善のカギであることも、大会で確認し合うことができたのも一つの成果といえると思います。
メーンテーマは「医療の新たなうねりのなかで~健康創造」
―今回、51回目の学術大会では何をテーマに、開催するのでしょうか。
吉田 今回のメーンテーマは、「医療の新たなうねりのなかで~健康創造~」としました。時代は20世紀からの大きな変わり目を迎えた谷間のときであり、医療も、この潮流に呑み込まれ、一部崩壊が始まっています。
ですから世界中から知恵を出し、自然にも優しい社会、そして組織より人間一人ひとりが大切にされるバランスのとれた社会にならなければ未来はありません。
「健康創造」とは、自然との共生をはかり、地域性を生かしながら、個人に合った方法で、問題に正面から向き合って、生きる力を発揮できる健康づくりのことです。
人間ドック健診では、一人ひとりの性や生き方、生きがいを尊重しながら、環境との関わりの中で、「健康創造」に対する意欲を呼び起こすことが重要になります。
病気の早期発見や病気にならないための環境づくり、さらに健康増進に関わる情報発信など、2次、1次、そして0時予防と発展していければと考えています。この大会を通して、「健康創造」というものを具現化するツールが見い出せるように願っています。
―それでは、どのようなプログラムで行うのでしょうか。
吉田 まず、大会長講演として、日本人間ドック学会の奈良昌治理事長を座長に、私が演者となり「健診29年間の集大成と将来構想」と題して提言を行います。
特別講演としては、東京慈恵会医科大学の栗原敏学長に「脚気の予防を巡って」と題し、旭川医科大学の吉田晃敏学長に「北海道から発信する地域医療革命」をテーマで講演していただきます。
教育講演では、「高血圧、メタボの現状と課題」「人間ドックと禁煙」「現代社会と睡眠」「わが国からの胃癌(がん)撲滅をめざして」「漢方と予防医学について」「不思議なカビの世界」と題して、それぞれ専門の医師が講演します。
市民の皆様が参加できる一般公開講座もあり、こちらでは私が座長を務め、旭山動物園の小菅正夫前園長が演者に、「『いのち』を次ぎの世代に伝えるために野生動物は生きている。さて私たち人間は?」と呼びかけ、独自の見解を展開します。
もう一つの一般公開講座は、国立がんセンターの垣添忠夫名誉総長が「がんと人間と社会」をテーマに講座を開きます。このほか「労働者に対する特定保健指導の意義」「糖尿病・・診断と管理の新展開」と題したシンポジウムも行われる予定です。
人間ドックの目的は、病気にならないための環境づくりへ
―人間ドックに関する今後の取組や抱負などについて、どうお考えでしょうか。
吉田 日本の人間ドックは、技術や施設、スタッフとも世界トップレベルです。ですが、日本の北端に位置する北海道と南端の沖縄県とでは、気候条件から文化、伝統、生活習慣、さらに生態系まで異なります。日本の実面積は米国のわずか4%にすぎませんが、南北で見ると亜寒帯から亜熱帯まで米国と同等に延びており、一つの基準で計るには大きすぎるスケールです。
北海道だけで見ると、日本全土の20%の面積で森林も25%を占め、水資源も豊富で観光地としての大きな可能性も残しています。ですが、将来には大きな不安があり、20年後の人口は今の550万人から440万人に減少する予測が出ています。
それ以上に危惧されるのは、人口および経済等の札幌への一極集中の現象です。これに伴い、地方の市町村が自治体としての機能を十分持てずに散在状態になってしまうようなことがあれば、北海道全体が持たなくなります。どうすれば北海道での暮らしに対する安心や幸福度が守られるのか、これは他県の地方都市にも共通しているのでしょうが。こうした社会的な背景を踏まえ、今回の学術大会で「健康創造」をテーマにしたのも、そうした理由があります。
また、今までも医療や医学に関する学会は、年3回ほど旭川で開かれています。聞くところでは、これまで札幌と1時間20分は通勤圏内であり、札幌に泊まる参加者が多いといいます。本学会では3000人以上の参加者や同伴者に、できれば全て旭川市や近郊に宿泊してもらいたいと思っています。学会の内容だけではなく、旭川に泊まって旭川の良さを大いに味わってもらいたいと思うからです。そのために、学会後の観光スポットへの案内、アクセス方法、家族・お子様同伴のツアーコースなども準備しています。
そして何よりも北海道の食べ物や飲み物は、全国的にも人気抜群で参加者の期待はとても大きいものがあります。この期待に応えられるように、アフター5の飲食は3・6街のサービスを含めて、絶大なるご協力をお願い申し上げます。安価で美味しい北海道の幸と心のこもったおもてなしで、リピーターになってくれる旭川ファンを沢山作りたいと思っています。この大会を通し皆様のご協力を得て、今必要とされる旭川の活性化に少しでも貢献できれば幸いと思います。