2006年4月より、旭川商工会議所からの依頼により月1回会報 あさひかわに「2050年からみた旭川 - 未来からの警鐘」というタイトルで掲載しております。

執筆 : 医療法人社団慶友会 理事長 吉田 威

[その1] [その2] [その3] [その4] [その5] [その6] [その7] [その8] [その9] [その10] [その11] [その12]
[その13] [その14] [その15][その16][その17][その18][その19][その20][その21][その22][その23]
[その24]

2050年からみた旭川・・・No.1 (2006年4月号掲載)

 世界の人口が毎年7000万人ずつ増え続けている。その中で日本は2005年から人口減少時代に入った。過去・未来100年間の日本の人口の動きは、2000年を境にほぼ左右対称形をなす。(図1)つまり2100年には今の人口の半分になると推計される。
 2050年の未来から振り返って、36万人都市旭川について今どう考えて何をしていくべきかをここで論じてみたい。不確定要素が多く将来予測の難しさを実感しながら、話題提供の寄る辺になれば幸である。
 なお、ここで使用する統計・分析は特に断らない限り慶友会企画部のものである。

図1
  (慶友会 企画室)

 1.人口の面から

① 人口の推移(図2)
 将来予測では比較的確度が高い人口の動きについてみると
 1955年→ 人口構成は理想形に近い「ピラミッド」型。出生率*1は2.01以上。労働人口も充たされており、高齢者は4%と若者が主体の社会である。
 2000年→ 団塊の世代の突出はあるが「釣鐘」型。出生率は1.18と著しく減少。労働人口は68%で保たれている。1980年から高齢化社会*2に入ったが、2000年にはさらにすすんで高齢者は18%を占める。
 2030年→ 女性の高齢化がすすみ、左右対称形が崩れ高齢者は33%。底辺が示す少子化はそれでも未だ自分で立っていられる形状。年齢構成グラフは不安定な「花瓶」型になる。
 2050年→ 高齢者は最大39%の超高齢化社会。労働人口は50%を切る。少子化はすすみ、支えが無ければ、倒れてしまう形。総人口もピーク時の60%に減少する。現行体制を持続するのが難しいのは安易に想像できる。

図2
 

(慶友会 企画室)

 ② 出生率・出生数
 2003年には出生率は1.20。因みに2003年の出生率は全国平均で1.29と、1.30を割ったことで話題になった。厚生労働省の人口推計は1.30を最低として統計を算出しているので、人口は今以上に減少すると考えた方がよい。
 旭川の出生数は、この10年間で3381人から2898人(2003年)と15%も減少し回復の見込みはない。少子化がはじまったのは、全国的にみても45年前(1960年)からで、これを増加に転ずるのは並大抵のことではない。

③ 100才以上の長寿者
 年々増加し、2005年には57人、男性9人女性48人。この延びから推定すると100年後には平均寿命が100才以上(センチナリアン)も夢ではない。

④ 死亡数
 高齢者の死亡はインフルエンザの流行に左右される。高齢者が増えると死亡者も増加する。2005年には出生数を上回った死亡者数で、逆転し人口減少時代に入った。今後出生者数が死亡者数を上回ることはない

⑤ 自殺者数・交通事故死
 60人前後だった自殺者が世相を反映し、1998年に急増し(107人)、2002年に110人とピーク。自殺者の実数は、なかなか表面に出ないものもあり、実際はこの2~3倍はあるか。原因は「健康問題」「経済問題」が上位にあり、景気の回復とともに減少が期待される。
 交通事故死は年間40~50人。子供や若年者も含まれ、出来るだけ少なくする努力が欲しい。

 人口増加の対策で単一有効な方法がないというのが世界の常識。人口動態から少なくとも現行の社会保障制度の存続は絶望であることは理解願えたと思う。自由競争時代では原則「自分のことは自分で守る」のが健康・財産・生活全てに共通して言えるのではないだろうか。

 次回は医療の面から分析する。

 *1 出生率(合計特殊出生率)

1人の女性が一生の間に生む子供の数
2.01以上なら現状維持。これより低くなると人口減少となる。2003年に全国平均が1.30以下となり、大きな問題としてマスコミに取り上げられた。旭川市でみると、1999年に1.17、2003年には1.20と全国平均より下回っている。

 *2 高齢化社会

65歳以上の人口に占める割合が7%以上になった社会をいう。超高齢化社会は14%を超えた時に総称される。

2050年からみた旭川・・・No.2 (2006年5月号掲載)

 2015年にヒトの2万2000の全遺伝子が解明される。原因遺伝子の発見は、病気の兆候を調べる画期的な方法として診断に、また創薬の開発はオーダーメイド治療へと進む。 胚性幹細胞(ES細胞)*1による再生医療が遺伝子治療とともに、これからの医療の中心となる。
 また一方では病気にならない環境づくり、生活習慣病の予防・管理、エイズ、ウィルス肝炎、新型インフルエンザなど感染症対策や認知症対策が重視される。
 厚生労働省では、健康づくりと生活習慣病予防のための新しい標語を提唱している。「一に運動、二に食事、しっかり禁煙、最後にクスリ」で、“しっかり禁煙”がこの度特に強調したかったところである。

2.医療の面から

①推計がん患者数と死亡者数の推移(図1)

図1 人口推計とがんの推計人数(旭川市)

(慶友会 企画室)

 旭川のがん患者は2020年を頂点にゆるやかに減少し、死亡者も2030年をピークに減少する。今は、がんの5年生存率は50%そこそこだが、この頃には70%を越えて治る病気という認識になっている。がんは遺伝子の病気であるとともに、ストレス、細菌、ウィルス感染、タバコ、アルコールや食生活を中心とした生活習慣の外的因子に深く関わりを持つ。老化との関係から55~60才が発病の危険年齢として、がんに焦点をおいた検診*2をお勧めする。
 遺伝子による病気とは、自分がどんな病気に罹り易いかを両親・兄弟姉妹さらに祖父母まで拡げてもいいが、どんな病気に罹ったかを大凡の目安とするのがいい。その臓器に重点をおいて調べるように心 掛ける。

 国内の推計*3で、2020年に死亡が最も多くなる がんは

男:①肺がん   ②肝がん   ③胃がん   ④大腸がん  ⑤前立腺がん
女:①肺がん   ②乳がん   ③大腸がん  ④肝がん   ⑤膵がん

 別の見方で、2000から2020年にかけて増加率の高い順でみると

男:①前立腺がん ②大腸がん  ③胆のう がん ④腎がん
女:①腎がん   ②大腸がん  ③卵巣がん   ④乳がん

 男性は肺、肝臓、前立腺、大腸がんが、女性は肺、乳房、腎臓、大腸がんに特に注意を払うべきであろう。
 これらのがんは、血液検査と内視鏡(胃・大腸ファイバー)、CT、超音波検査、マンモグラフィーで発見出来る。
 2020年までには、全てのがんの血液検査による早期診断が可能になり、さらにがんの予防薬も開発されるという。*4
 有効な放射線治療、化学療法と遺伝子治療はがんが不治の病ではなく、治る病気として実感できるようになるだろう。

 次回は、これからの旭川の外来患者数・入院患者数の推移とその対策につづく。

 *1 胚性肝細胞(ES細胞)
初期の胚の細胞を培養して得られる細胞で、一般には不妊治療の際に生じる使用されなかった、受精卵から作られる細胞。血液・神経・肝臓・骨・心筋といった様々な細胞を作り出すことができ、再生医療への応用に注目されている。

 *2 検診
特に症状がなくても、医学的な診察や血液・尿などの検査をして健康状態を把握したり、病気の早期発見をすることを健康診断(健診)という。 検診は、がんなど疾患を特定して検査をすすめるときに健診とは区別して用いる。

 *3 がん・統計白書-罹患/死亡/予後-2004
編集:大島明氏 黒石哲生氏 田島和雄氏  篠原出版新社

 *4 文部科学省デルファイ調査 2035年の科学技術 2005年8月発行  文部科学省

2050年からみた旭川・・・No.3 (2006年6月号掲載) 

 「不老不死」は古から叶わぬヒトの願いである。科学の進歩は加齢のメカニズムを少しずつ明らかにし、その中で「抗加齢医学」(アンチエイジング)が注目されている。生活習慣病の予防を目的にライフスタイルの改善とサプリメントによる抗酸化ビタミン、ミネラルの補給で健康長寿を考えていく医学。また、はり・きゅうや漢方などの伝統医学を基盤とした「代替医療」、近年は西洋医学と一緒になり「統合医療」が患者中心の医療として米国で提唱され、欧米・日本に拡がっている。慶友会が目指している温もりの感じられる「心ある医療」の方向に世界の流れが向いている。

 さて旭川の患者動態についてみると

① 疾患別推計外来患者数の推移(図1)
 高血圧症と肝疾患については、患者数はほぼ一定しているが、糖尿病・心疾患(以下心筋梗塞)・脳血管疾患(以下脳卒中)は2020年をピークに減少する。 がんもこれらの疾患に比べるとゆるやかだが減少してくる。患者数の最も多い糖尿病は、2020年の遺伝子治療、2030年の埋込型膵臓や胚性幹細胞を用いた再生医療 の進歩で、さらに治療の好結果が期待されグラフに示される以上に減少していくと予想される。
 心筋梗塞・脳卒中もメタボリックシンドローム*1の管理方法の確立と、それによる生活習慣の改善で、患者数は大きく減少するだろう。
 高血圧症については、その治療指針が認知され、また2015年には肝疾患とくにウィルス肝炎の治癒かつ薬の開発で、将来に明るい希望がもてる。
 個々人が、最も適した治療-オーダーメイド治療-を受けられる時代が確実にやってくる。

(慶友会 企画室)

② 疾患別推計入院患者数の推移(図2)
 外来患者との違いは、入院患者の方が重症だと考えていい。その中で特記すべきは、外来で4位ランクの脳卒中が入院では突出したトップにある。
 入院が多いのは、リスク因子の管理による発症予防がいかに難しいかの証拠でもある。
 がんは、手術によるものも1週間以内になるだろうが、2010年以降は放射線治療や化学療法が主流になり外来治療が可能となる。
 心筋梗塞や肝疾患などもごく短期間の入院となり、入院にたいするイメージが現在とは変わってくるだろう。
 交通機関の発達で世界は狭くなり、エネルギー消費の増大とともに炭酸ガス排出も増え温暖化現象は加速される。今まで限られた地域だけでみられた感染症が世界中どこにでも、たった1日で運ばれる時代になる。エイズ・ナイル熱・エボラ出血熱・肝炎ウィルス・SARSなど新興・再興感染症*2や、さらに地震など 、また近々中に必ず来るといわれる新型インフルエンザパンデミックで、その国の医療に対する取り組みが問われることになる。

(慶友会 企画室)

*1メタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群) 心筋梗塞、脳卒中の発症を少なくするために、その基盤となる動脈硬化のハイリスク者を見つけ、生活習慣の改善を行っていく為に、腹囲を必須項目にした診断基準が2005年4月に定められた。
 診断基準は・・・
 臍周囲径 男性85㎝以上 女性90㎝以上
 上記に加えて以下のうち2項目以上
①中性脂肪 150
かつ/または
HDLコレステロール 40
②収縮期血圧 130
かつ/または
拡張期血圧 85
③空腹時血糖 110

*2新興・再興感染症 新興感染症は、突然流行する未知のウィルスなどによる感染症で、エボラウィルス・マールブルグウィルスなどによる出血熱、SARSウィルス、C型肝炎ウィルス、エイズなどがある。一度流行したものが時を経て再流行した感染症を再興感染症という。

2050年からみた旭川・・・No.4 (2006年7月号掲載)

 科学は万能のようにいわれるが果たしてそうなのか?ニュートンの力学原理は量子物理の世界では成立しなかった。科学の真理が唯一との考えが否定された瞬間だった。
 医学においても、事実と信じられていたことが訂正されるのは珍しくはない。
 2020年以降は遺伝子解明の産物が実用化されて検査・治療に応用される。今までの医療のように漠としたものではなく、個別(テーラーメイド医療)でより適格な治療(個の医療)が行われるだろう。しかし、それでもヒトの身体の仕組が全て分かったのではないので、まだまだ未知の部分が残されている。 数値や理論で説明されるなかにあって、4000年受け継がれてきた漢方やアユルベーダの伝統医学の存在価値は、その歴史の重さから学ぶべきことが多い。

 ******************************** 医療戦略 ********************************

 今まで挙げてきた旭川の人口の推移、外来・入院患者数の推移と分析に加えて、長寿社会でのQOL(生活の質)の維持や、社会保険制度の面から予想される2030年の医療戦略を考える。

1.対象

 対象疾患のがん、脳卒中、心筋梗塞は今後も三大死亡の原因疾患として異論のないところ。脳卒中、心筋梗塞はその発症機序と血管が主たる病変の場であることから、脳血管疾患としてまとめる。
 次に感染症。人類が存在する限り、共存するか戦うかは永遠の命題である。細菌、ウィルスが、がんの原因であることは、既にB型・C型ウィルスと肝 がん、ピロリ菌と胃がんなどでよく知られているが、死亡率第4位の肺炎や数十年に1度の大流行で、1つの病気として短期間でみると最も死亡者数の多いインフルエンザ。新型H5N1ウィルスが1918年の大流行を再現すると世界的パニックになると予想される。これらは感染症としてまとめられる。この20年間を見ても新興・再興感染症が1~2年に1つは報告されている。多くの死亡者をだしたSARSはまだ記憶に新しい。さらにこれに加えて戦略対象として「未病」をあげたい。「未病」は漢方など東洋医学でいう病気になる前の状態、つまり「病気のきざし」のこと。病気になる前にその芽を見つけて対処するのが、これからの医療におけるミッションのひとつである。

 そこでまとめると、対象は・・・

 1)がん 2)脳血管疾患 3)感染症 4)未病

 次に各項目に対しての作戦を取り上げる。

2.対処法

 個別の解説については次回に。

2050年からみた旭川・・・No.5 (2006年8月号掲載)

 厚労省は女性77.7歳、男性72.3歳の世界1位の「健康寿命」を健康日本21の徹底で、さらに2年延長を目標にしている。加えて、生き生き働く「労働寿命」を75歳にすれば年金の不安も少しは軽減されるのだが。
 ここで病院の機能も、その発想を病気から健康を起点に転換をはかる。予防医学の目標が健康診断重視のなかで、生活習慣病の目玉商品のひとつとして出されたのがメタボリックシンドローム(MetS)である。

  医療戦略2は、各項目の対処法を少し具体的に解説する。

2.対処法

 ①がん

 ⅰ)遺伝子診断・治療
 出生時にすべてのゲノム情報が解析され、一生のうちにどんな病気になり易いか、その対応と未然に防げるものか、発症をおくらせられるものかがチェックできるようになる。また遺伝子にコードされた微量のタンパク質を血液や尿から検出し病気の早期発見・診断に応用できる。
 治療面では、がん発病を抑えたりおくらせたりする遺伝子操作が可能になるだろう。また今行われている白血病の骨髄移植のように幹細胞を用いた再生医療が、神経系・心筋など全ての臓器にも適用されるようになる。
 がん治療の第一選択も、手術から放射線・化学療法(抗がん剤)・免疫療法が主流になる。当然、切る治療は人気がなくなる。
 発病を抑え予測し対処する「先手の医療」が大勢となるので、診断・治療システムが大きく変わると思われる。

ⅱ)生活指導・管理
 がんの原因が突然変異で活性化した遺伝子の変化だけでなく、環境の影響を受ける。そのために生活習慣を是正する保健指導が、個々人に適切に提案し実施されるシステムの構築。免疫能を低下させる糖尿病、40歳以上の60%(1960万人)を占めるMetSの管理、感染症(ピロリ菌、B・C型肝炎ウィルスなど)の認識、単品では最大の危険因子であるタバコに対する環境対策は変わらぬ問題として提起される。

ⅲ)緩和ケア・在宅管理
 がんの終末期医療はQOLを念頭に代替医療を加味して、痛みや苦痛を除くことに全力を尽くし精神的に安定した環境が得られるように努めることである。病院なら緩和ケア病棟であり、許されるなら在宅管理が望ましい。生きてきた集大成が厳かで、個々人に相応しい医療がなされるべきである。

②脳血管疾患

ⅰ)基礎疾患管理
 脳卒中・心筋梗塞はMetSの延長線上にあり、その保健指導プログラム(案)が厚労省から提示された。MetSは危険因子が重複するほど、脳血管疾患が発症しやすいことはエビデンス(証拠)から明らかである。なかでも糖尿病と高血圧症がその管理の中心である。
 この2つの危険因子の組み合わせは、危険度を5~10倍にも高めると認識してほしい。

 厚労省からの指導では・・・

正常 保健指導 受診推奨
空腹時血糖 mg/dl 100未満 100~126未満 126以上
随時血糖 mg/dl 140未満 140~180未満 180以上
ヘモグロビンA1C % 5.5未満 5.5~6.1未満 6.1以上
中性脂肪 mg/dl 150未満 150以上 150以上
HDL コレステロール mg/dl 40以上 40未満 40未満
収縮期血圧 mmHg 130未満 130~140未満 140以上
拡張期血圧 mmHg 85未満 85~90未満 90以上
LDL コレステロール mg/dl 120未満 120~140未満 140以上
尿 酸 mg/dl 7.0未満 7.0~8.0未満 8.0以上

 自分の健診数値と合わせて保健指導に該当すれば、会社の保健室に足を運ぶ。また、受診推奨の数値以上ならば、かかりつけの病院で相談するよう勧めます。

 次回は脳血管疾患のⅱ)遺伝子診断・治療につづく。

2050年からみた旭川・・・No.6 (2006年9月号掲載)

 日本では所得が低いほど要介護者に認定される割合が高く、うつ状態と判定される人も多い。差し障りがあると困るので、イギリスの例で職業上の地位(職位)と死亡率の関係を示す。4階層に類別すると、最高と最低の階層では3倍以上の差があり、職位が2番目に高い層も最も高い層に比べて死亡率が高かった。言い換えると地位が低くなるほど死亡率が高くなると結論される。日本でも職位の低い層ほどストレスに弱いという結果があったと記憶する。
 昨年の死亡者をみると、がん・脳卒中では減っているが、心臓病・自殺・肺炎が増えており結果として平均寿命を下げ、長寿世界一の座をおりた。
職位の上にある人は、部下の死亡率が高い事実を時に思い起こし言動に配慮すること。自然の掟の中で人智の及ばざることは多いが、自分を省みて、50代の女性、60代の男性が一番がんで死ぬことが多いと知っておく、また自殺や肺炎で亡くなる人が少しでも少なくなるように、専門家の適切な指示をうける。がん・心臓病・脳卒中も定期的な健康診断を活用し、今受けられる進んだ医学の恩恵を無駄にしないことが肝要である。

 ここからは、先月のつづき

②脳血管疾患

ⅱ)遺伝子診断・治療
  ここでは基礎疾患の糖尿病と高血圧について解説する。
 糖尿病は、腎臓の合併症がでない限り食べて駄目なものはない。「美味しいものを少量」の少量が難しいが、95歳で現役の日野原重明先生(聖路加国際病院理事長)のように1日1300キロカロリー(通常は2000キロカロリー)の極端でなくても、少ないほど長寿であると証明されている。
 糖尿病は習慣病だがその発症に遺伝子の関与がある。糖尿病になり易いかどうか自分でできる簡単なチェック法は、両親をみること。親の1人が糖尿病なら25%の確率で、つまり4人の子供がいれば誰か1人は糖尿病を発症する。その不幸な人は、飲みすぎ・食べすぎ・太りすぎの人で可能性が高くなる。また不幸にして両親ともに糖尿病なら、子供の2人に1人と確率は高くなるが、発症から逃れたいなら適正な体重と運動を心がけストレスの発散を上手にしていくなどライフスタイルの工夫が必要。
 高血圧症も遺伝的背景のなかで、不摂生な生活習慣が関係している。5年後には遺伝子検査も手軽に出来るようになるだろうが、それまでは両親・祖父母・兄弟姉妹など自分の周りの血圧が高い人がどれ位いるかに気を配るのがよい。心臓病・脳卒中には家系に多く居るほど厳重な血圧のコントロールが必要で、他の病気との重複にもよるが130/85を目標とする。さらに日中の血圧変動ばかりでなく夜間就寝後の血圧も簡単に測定する方法があり、心配な方は受けるように勧める。
 脳血管疾患は、その発症予防に注意を払うべきで、少なくとも未来を予測し今できることを考えるなら、糖尿病と高血圧に対する管理がその大部分を占めることは繰返して強調しすぎることはない。正に予防は治療に勝る。
 脳血管疾患では、不整脈にも注意すべきで、どんな不整脈かは検査しておくべきである。 将来、遺伝子組換えが実現し分子遺伝子病が治療可能になった時には糖尿病・高血圧症も完璧な形でコントロール可能になる日が来ることを期待している。

ⅲ)生活指導・管理
 生活習慣病に準じた指導・管理が全ての疾患に共通する。糖尿病・高血圧症の人は厳重な管理をうける。優しく緩んだ治療は脳血管疾患発症には効果が極めて少ないと知ること。幸い未だ基礎疾患と診断されていない人は、メタボリックシンドローム(Met S)の数値を目標にする。
 ここでの厳密な生活指導・管理は確実に脳血管疾患の発症を低くし、QOLを保った状態で健康寿命を延長できる。

ⅳ)病後の社会復帰(リハビリテーション)
 危険因子を取り除く努力をしても、不幸にして発症した時には、専門の治療を受けるのは言をまたない。加えて重要なことは速やかに熟練された療法士のもとでのリハビリテーションである。いかに速くリハビリテーションを受けるかが予後を決定する。障害ができるだけ残らないように、またたとえ障害を残していても社会復帰してノーマライゼーションのなか老若男女ともに一体となって己の役割を果たすのが未来に期待される社会である。

 次回は ③感染症、④未病 につづく

2050年からみた旭川・・・No.7 (2006年10月号掲載)

 購読されているのが、55才以上の男性が多いと思うので、今回はその方々を対象にして前立腺肥大を取り上げる。
高齢化に伴い排尿障害や尿失禁の泌尿器疾患は「国民病」となっている。その中でも前立腺肥大はこの15年間で3倍以上増えており400万人と推計される。55才以上の男性の5人に1人とすると旭川には1万2千人が該当する。
 国際前立腺症状スコア(IPSS)は、自覚症状が未だ現れない前に、その評価結果から前立腺肥大症を自己チェックできる。
 参考までに、IPSSで問われる症状は次の7項目
①残尿感②頻尿③尿の途切れ④我慢が辛い⑤勢いが弱い⑥いきむ⑦夜間2回以上トイレに行く・・・の中で、「時々」が4項目、あるいは「しばしば」が2項目以上なら中等度の排尿障害で前立腺の診察を受けた方がよい。
 残尿測定は前立腺肥大には欠かせない検査だが、超音波検査で何の苦痛もなく短時間で済むので是非思い当たる人は受けるように勧める。前立腺がんも増加がんのトップにランクされている。これについても年に1度の血液検査(PSA)は欠かさないようにしたい。

 ■ 国際前立腺症状スコア:合計点が7点以下なら軽症、8から19点は中等症、20点以上は重症と判定する

症状

全くない あまりない 時々 2回に1回 しばしば いつも
1.残尿感
2.頻尿
3.尿の途切れ
4.我慢が辛い
5.勢いが弱い
6.いきむ
7.夜間回数 0回 1回 2回 3回 4回 5回

 先月に続いて

2.対処法

③ 感染症

ⅰ)予防・予報
 SARS、インフルエンザなど感染症でワクチン予防できるものは積極的に受ける。大切なことは正確な情報に基いて行動すること。必ずしもTVや新聞、雑誌が正確な情報源とは限らず、特に風聞は嘘かも知れないと疑ってかかる用心深さが欲しい。過剰に反応したり、偽情報でパニックに陥ることが一番憂慮される。
 その感染症が地域に限定されるのか、世界規模で拡がるのかの情報は、「IDWR 感染症週報」(厚生労働省/国立感染症研究所)(http://idsc.nih.go.jp)、WHO(世界保健機関)、CDC(米国疾病予防管理センター)から得られる。より手軽には慶友会(http://www.keiyukai-group.com)など医療機関に問い合わせるのもいい。 見えない敵を相手にするので危機感を煽られないように、とくにTVのワイドショーがパニックに陥るような情報源になり得るかも知れないと危惧する。
 いずれにせよ日頃から情報の入手について学習しておくことを勧める。

ⅱ)治療
 ワクチンは副作用をチェックしながら受けるように勧める。新興感染症ではワクチン製造が間に合わない、難しいものもある。指定の専門病院で治療のガイドラインに準じて適切な治療を早期に受けるようにしたい。

④ 未病

 これからは精神面を含めた個々人での健康自己管理が基本となる。従来いわれている健康によい環境をつくることが本当に個人にとっていいことなのか。ここで「フィンランド症候群」について紹介する(※)。
 フィンランド政府は40~45歳の上級管理職600人を選び定期健診、栄養チェック、運動、タバコ、アルコール、砂糖、塩の摂取の抑制を承諾させ15年間実施。一方、同じ上級管理職に属する600人の対象群は、ただ定期的に健康調査票に記入するだけを依頼した。
 さて15年後の結果は?
 脳血管疾患、高血圧、がん、各種の死亡、自殺のいずれも健康管理されていない群の方が成績が良かった。
 この理由の詳しい説明は省略するが、一言でいえば人は自由に生活することによって生体として抵抗力をもち、きっちりと管理されるとかえって不健康になるのではないかと結論される。
 「タバコは駄目、アルコールは控え目に、塩は極力少なく」は忠告としては正しいが、これからの健康管理は医学上の個々人の特性を把握し、単に標準的な数値を当てはめるだけではなく、もっと広範囲からの発想で管理すべきであると「フィンランド症候群」は示唆している。

※水野肇「医療はどこへ向かうのか」草思社 2006年7月31日

2050年からみた旭川・・・No.8 (2006年11月号掲載) 

 場面は、私が下田から東京へ帰る乗船場。栄吉と踊子が見送りに来ている。 “そこへ、「お婆さん、この人がいいや」と、土方風の男が私に近づいて来た。「学生さん、東京へ行きなさるだね。あんたを見込んで頼むだがね、この婆さんを東京へ連れてってくんねえか。可哀想な婆さんだ。倅が連台寺の銀山に働いていたんだがね、今度の流行性感冒って奴で倅も嫁も死んじまったんだ。こんな孫が三人も残っちまったんだ。……」ぽかんと立っている婆さんの背には、乳呑児がくくりつけてあった。” ノーベル文学賞作家の川端康成「伊豆の踊子」の一節。そのなかでインフルエンザが流行性感冒として猛威をふるった情景が描かれている。これは1918年(大正7年)のスペインかぜのことで、日本では大正風邪と呼ばれ死者20万人をだした。14世紀に全ヨーロッパで大流行したペストは、黒死病という名で当時のヨーロッパ人口の30%を死亡させたが、このスペインかぜも5000万人以上の死者を出し世界を震撼とさせた。
 今専門家はこのスペインかぜに匹敵する大流行(パンデミック)が必ず起こると断言している。それを引き起こすウイルスが1997年8月に香港で死亡した3才男子から検出されたH5N1であることも明らかである。はっきりしていないのは、今年なのか来年なのか世界的大流行になる時期だけである。初めて出会うウイルスなので誰もがこのウイルスの抗体(抵抗力)を持っていない。だからこのウイルスに接した全ての人が感染する。ここでは、必ず大流行する新型インフルエンザについて解説する。

Ⅰ.流行の規模

 インフルエンザは毎年12月ころから流行がみられる。その規模もその年によって流行が小さかったり大きかったりする(図1)。
 このグラフでみられる棒の高さは人数を表わしている。1~2年毎に高い低いがあり、これはその年によっての患者数の変化を示す。ウイルスの種類や遺伝子の変異、気象条件などに左右されるためと考えている。
 1900年代では、1918年(スペインかぜ)1957年(アジアかぜ)1968年(香港かぜ)1977年(ソ連かぜ)のように、流行規模は10年ごとに中程度の流行があり、さらに70年周期で大流行がある。今危惧されているのはこの大流行についてである。 この周期はウイルスが活発になったり、新型が生まれたりとウイルス生活史のリズムを感じさせる。

図1


データ引用元:「日本医事新報」、「感染症発生動向調査週報(IDWR)」
グラフ作成:慶友会企画室

Ⅱ.過去の流行から学ぶ

 隔年の周期性は2000年からその規則性が乱れている。70年周期のパンデミックは、新型インフルエンザウイルスH5N1によるものと考えて間違いない。それでは史上最強のスペインかぜが、北海道・旭川に死亡者数ではどんな状況をもたらしたのか、情報の分析を試みた。(図2)
 平年に比べて全国、北海道で1918年11月には突出して多い。またその1年後には第2波による小さなピークがみられる。全国、北海道では時間のズレはあるが状況証拠からはっきりと余波として見てとれる。

図2

データ引用元:「日本人口統計集成」(東洋書林)
グラフ作成:慶友会企画室

 旭川の解析は次回に。 

2050年からみた旭川・・・No.9 (2006年12月号掲載)

 慶友会の4つの医療戦略目標のひとつに感染症をあげている。感染症の脅威は人類が地上に現れた500万年前から始まり、生存する限りその対象がペスト、エイズと形を変えても常に身近な永遠の課題として続いていく。
 ここで取り上げているインフルエンザも近い将来必ず大流行(パンデミック)をおこす。それは数週間で世界規模にまで拡がり、人口の半数が感染しその1%は死亡するとWHO(世界保健機関)は予測する。その原因ウイルスであるH5N1型による感染例も50%以上の死亡率であり誇張された数字ではないことがわかる。
 短期間に1000人単位の死者が出たら、旭川でなくとも社会的混乱(パニック)に陥ってしまうのは必然である。

Ⅱ.過去の流行から学ぶ

 1918年(大正7年)北海タイムス紙は、当時の旭川の「スペインかぜ」を詳細に報じている。凄まじさが窺えるそれらの記事を基に再現したのが「旭川の罹患者数推移」(図1)である。

図1

(慶友会 企画室)

 1918年10月から感染者は増えはじめ、1919年1月前にはほぼ終息している。(最近の傾向ではピークは1~2月であり少し遅れてきている) 集中的に患者が増えているのは10月中旬から60日間。
 死亡者は11月はじめから増えはじめ2~3週間後に最大となり12月10日までに終息しているので40日間。
 「日本人口統計集成」を参考に全国、北海道のインフルエンザ死亡者を1918年前後で比較した(図2)。

図2

(慶友会 企画室)

 死亡者は11月、12月に増加する傾向を示し警戒のポイント、集中的な治療対策の参考になる。
医療状況が今では格段に進歩して同じ統計を当てはめようとは思わない。しかしH5N1型ウイルスによるインフルエンザは「かぜ」とは似て非なるものであり、死亡率の高い未だ確立された治療のない感染症として、治療する側も受ける側もそれなりの認識が必要である。
 ここで大流行の「スペインかぜ」と中流行の「アジアかぜ」「香港かぜ」の違いを指摘しておく。
 「アジアかぜ」「香港かぜ」はトリインフルエンザとヒトインフルエンザに同時に感染したブタの体の中(細胞)で、ウイルス遺伝子の一部が入れ替わって(遺伝子再集合)全く新しいウイルスができる。そのウイルスに抵抗性をもたないヒトは全て感染する。このタイプのウイルスによる死亡率はそれほど高くはない。
 一方、アラスカの永久凍土で見つかった「スペインかぜ」のウイルス分析から、これは再集合ではなくトリインフルエンザだけに由来していることがわかった。それがトリからヒトに直接感染し、さらにヒトで複製能力を得てヒトからヒトへ感染するようになる。このウイルスに感染した50%以上が死亡するという強毒性であることも既にわかっている。
 これから流行するH5N1型ウイルスは、どうやら「スペインかぜ」タイプらしい。

 それでは、どんな対策があるのかは次回に。 

2050年からみた旭川・・・No.10 (2007年1月号掲載)

 一般にインフルエンザは季節病であり、流行規模はその年により変わるが、わが国では年間1000万人が罹患し、5000人から1万人が死亡する。旭川市は3万人がインフルエンザにかかり半数が病院を受診する。10年周期で見られたアジアかぜ(1957~58)、香港かぜ(1968~69)、ソ連かぜ(1977~78)の経験から、第1波と同様に1年後の第2波による対策が大切であることを図1は示している。

図1

香港風邪が道内で流行したのは69年1月~2月(道内初上陸は69年1月28日)であるが、例年と比べそれほど死者は増加していない。 また、香港かぜの第2波流行があった1970年1月(濃色の棒グラフ)の死者が多い。

(慶友会 企画室)

 世界中で危惧されている新型インフルエンザの発生・流行状況を分類したWHO(2005年版分類)パンデミックフェーズによると(図2)、6つに区分されたフェーズ3である。

図2

 フェーズ3の対策は、新型ウイルスを迅速に検査・診断し、報告して次の患者発生に備えることである。フェーズ4になると隔離などの対策を検討し、ワクチンの開発と感染症対策に最大限努める。

 Ⅲ.対 策

 対策の基本はインフルエンザウイルスの弱点を知ること。低温・低湿度(室温8℃、湿度25%)では、長時間感染性を維持し生き続けることからインフルエンザは季節病といわれる。空気中に長く浮遊するほど小さな粒子で、セキやくしゃみで周りに撒き散らされ(飛沫感染)伝染していく。それを吸い込むと3日以内に発病の危険があり、ヒトにうつすのは発熱後5~7日間。

 ① ワクチン

 約半数の人しかワクチン接種を受けていないが、有効率は70%あり、必ず受けることを原則とする。
 ただ新型ウイルスには、そのワクチン開発が間に合わないが、1年後の第2波の死亡率が高いことを考えると、有効治療はワクチンに勝るものはない。

② 情 報

 厚生労働省が2005年11月に「新型インフルエンザ行動対策計画」を提示した。この詳細についてはインターネットなどを供覧願いたい。実際のパンデミックも感染性が強く死亡率も高いうえ完全に防ぐ方法も今のところはない。それ以上の恐怖は、錯綜する誤った情報が「見えないお化け」に怯えさせ、さらにパニックを拡大していくことである。 情報源は厚労省/国立感染症研究所からのIDWRなど信頼できるものだけにして、それを正確に民間医療機関が提供するシステム。「情報がパニックを引き起こし拡大させない」ことを過去の経験から学んだ。

2050年からみた旭川・・・No.11 (2007年2月号掲載) 

 英国の経済誌“The Economist”(2007年1月6日)に興味あるニュースを見たので紹介する。
 生活者が健康なライフスタイルで暮らす手助けをすることが大事業(wellness boom - ウェルネス・ブーム)になりつつある。今米国では成人の4人に3人は自分の生活が「バランスが取れていない」と感じており仕事と生活のバランス(WLB)を感じさせる製品やサービスを望んでいる。このウェルネス産業の台頭を支える力となっているのが保健医療費を削減したいという願望と、健康増進を感じさせる物に対する需要の高まりである。この傾向はだんだん強くなり、しかも市場調査でみるかぎり健康なライフスタイルに対する願望は65才の人より35才の人の方がはるかに強い。
 このウェルネス産業はスパ、伝統医学、代替医療、フィットネス、栄養学や美容など「多くの下流部門を統合した」幅の広い新部門である。しかし、サプリメント、有機食品などでわかるように本格的な科学とインチキ商品が入り混じるので信頼性の維持が大切である。また生活者の要求も一時的な流行や無意味なものの方が、苦労はするが効き目がはっきりしている健康改善法より人気があることに問題があるが。
 心身一体的な観点でウェルネスに焦点を当て、治療より予防を強調することで医療費を削減できる証拠も増えている。有名なAOL創設者のスティーブ・ケース氏のウェルネスの事業には、コリン・パウエル元国務長官、ヒューレット・パッカード社の元CEOカーリー・フィオリナさんらが名を連ねていることからも、これは本物に成長するだろう。
 このウェルネス・ブームが近い将来、必ず日本にもくるのは間違いない。先見の明でベンチャー事業を立ち上げる能力をもった人は早い方がいい。

 インフルエンザ

 Ⅲ.対策

 ③ 家禽間の流行

 中国やインドネシアのように家禽と同じ場所で生活する習慣がないので一般にはあまり問題にはならない。また鶏の感染については既にその対処方法は確立されており日本が発生源となることはない。

 ④ ウイルスの封じ込め

 インフルエンザウイルスは飛沫感染で曝露後3日以内に発病しその伝染させる期間は7日間。しかも5nmと小さく、いつまでも空中に浮遊している。だから実際に流行が起これば完全に封じ込めるのは不可能である。新型(H5N1)を指定感染症にしたのは、入院勧告、就業制限、医療費負担により健康被害を最小限にとどめるために患者を隔離することを目的とする。

 ⑤ 予 防

 手洗い、マスク(サージカルマスク)使用の基本を励行するが、ウイルスは撒き散らされ空中に浮遊しているので有効な予防法は感染者との接触機会をなくす以外にない。できるだけ外出せずに、特に人の集まるところへ行かないように心掛ける。

 ⑥ 診 断

 インフルエンザの流行時期に、38℃以上の熱、だるさ、筋肉痛とせきやたんなどの呼吸器症状が伴えば診断は容易である。
 クスリの効果を考えると、できるだけ早く病院で検査(ノドからの粘液で20分以内に診断される)をうけ抗インフルエンザ薬を服用する。

 ⑦ 抗インフルエンザ薬

 Ⅰ.タミフル(経口カプセル)
 最もよく使われており、新型インフルエンザにも効果があると考えられている。
 1日2回服用で5日間使用する。予防的には1日1回の服用で発症予防効果もある程度確認されている。高齢者や13才以上のハイリスク者に予防投与が7~10日間臨床使用可能になった。これに対しては保険適用外である。これからの大事な時期に受験生にも短期予防投与も考えてもよいか。
 副作用は下痢や吐き気で重篤なものはない。
 治療に用いる場合は、症状発現から2日(48時間)以内に開始する。早いほどよい。(これは以下のリレンザ、シンメトレルにも共通している)

 Ⅱ.リレンザ(吸入、ドライパウダー)
 耐性をつくりにくく、副作用が少ないのが特徴で、1日2回の吸入、5日間使用する。
成人だけが対象で、予防効果は確認されていない。

 Ⅲ.シンメトレル
 本来はパーキンソン症候群の治療薬だが、A型インフルエンザ感染に効果があることがわかった。
 1日1回(100㎎)服用で1週間。 予防的に用いるのは、ワクチン接種後2週間で、ワクチン療法の補完と考えること。
原則として小児、妊婦には使用しない。
 副作用は、インフルエンザの予防・治療に短期投与中の患者で自殺企図の報告があったが一般には、めまいやふらつき立ちくらみなどがみられる程度。ただし中枢神経系のクスリを服用中の人は注意が必要である。

 最近の治療のニュースから、ウイルスの細胞への侵入を阻止する新しいタイプの新薬が発表(ウィスコンシン大学 チェリー教授)された。また新型インフルエンザのワクチンの有効性が認められ、近々中に北里研究所から厚労省に申請される予定である。

 1918~20年のスペイン風邪の分析から、2004年に同じ規模の大流行が起こったとすると死者は6200万人を越え、死者の96%は発展途上国の人と推計される。日本の推計死者は12万と見積もっている。

 (The Lancet 2006年 12月23日)

2050年からみた旭川・・・No.12 (2007年3月号掲載)

 今までの厚労省の2025年の「国民医療費の見直し」で公表されたものである。
1994年 141兆円、2000年 81兆円、2006年は65兆円で、これも改革効果で56兆円まで圧縮可能であるという。1994年の141兆円が56兆まで変わるなら、この推計自体が意味がないか、あるいは厚労省が何か意図があって故意に誤算しているのかと勘繰りたくもなる。因みに2005年度の医療費は30兆円だった。この推計に対して医療費の長期予測は当らないし意味がない。むしろGDPに占める医療費給付割合を目標にしたほうが良いという意見もある。
 2006年第4次医療改革(2年に1度の医療改革がある)は、はじめて「患者中心の医療」を打ち出したなかで史上最大の診療報酬のマイナス改訂が強行され、医療機関の経営はピンチに追い込まれた。
 それでも2008年第5次医療改革案をみると、第4次改革はこれからの変化のほんの序曲であったとさえ思える。それほど次の改革は大きな内容であり、正に30年後を見据えたものである。
 そのポイントは2つ。予防医療と後期高齢者保険制度である。

 ①予防医療

 Ⅰ.特診(特定健康診査)
「糖尿病その他の政令で定める生活習慣病に関する健康診査」

 Ⅱ.特定保健指導
「特診の結果により健康の保持に努める必要がある者として、厚労省令で定める者(医師、保健師、管理栄養士)が行なう保健指導」具体的にはメタボリック・シンドロームの該当者・予備軍を対象とする。

 Ⅲ.医療費適正化計画における目標
・メタボリック・シンドロームの該当者・予備軍を2015年までに25%減少することを目標とする。これによる医療  費抑制は2兆円。
・健診受診率80%(08年は60%)、保健指導の実施率60%(08年は20%)を目標とする。
・特定保健指導による健康管理の成果が問われ、報酬にも反映する。

 今までは病気の治癒(診断・治療)が目標だったが、これからは健康の維持と「病気にならない環境づくり」を考えた健康管理をする。そのための具体的方法は運動と食事指導で、しっかりした生活習慣を身につける保健サービスが、従来の医療サービスにとって変わる。私はこれが健診ばかりでなく外来入院診療に取り入れられ医療の一元化された体系となると考えている。ここで目標達成の実績が上がれば診療報酬の配分が予防医療に重点化される。

 ②後期高齢者保険

 老いることに不安のない社会であり、皆保険制度を守り、医療のムダを出来るだけなくし医師も国民も納得する医療費適正化のために国保中央会(国民健康保険中央会)の提案の一部を示す。

 Ⅰ.基本的には、かかりつけ医(家庭医)が日常的な健康づくり、健康指導、疾病予防を積極的に行なう。病気になった時には、先ずかかりつけ医が診断・治療し、入院が必要な患者はしかるべき病院へ紹介する。大学病院は大変な設備と専門医の集団であり、外来は救急の搬送を除いて、いきなり患者が外来で飛び込むところではない。外来は先ずかかりつけ医(診療所・開業医)で診察を受けるべきである。

 今までの体制とどこが異なるか。従来は患者が「いつでも」「だれでも」「どこでも」「どの医療機関でも」受診できた。ここで「どこの医療機関でも」に制限がつく。つまり、“かぜかな”、“少しお腹の具合がおかしい”と思う時に今までは専門の先生も居るし建物もあれだけ立派なら診断・治療も最高だろうと選択の第一を大学病院にしていた。それがかかりつけ医を通して必要と診断されなければ大学病院での診察は受けられないシステムになる。
 本来大学病院は、専門性のある患者に対応できるように充分な時間と機会を与えるべきであり、一般の患者の外来は先ずかかりつけ医、開業医が受持てば良い。今までの大学病院をかかりつけ医がわりでは無駄が多すぎるのである。
2008年4月までに、後期高齢者保険の問題は国会で大きく議論され結論が出されるだろう。
 ここでは、かかりつけ医という一般医についての資格・資質から日常管理に対する報酬、何人ぐらい管理できるか、バックに病院が必要か、医者のグループでみていくのかなど多くの課題がある。
 後期高齢者保険は今後の保険体制への試金石となるものであり、保険制度の全面的見なおしに結びつく。
- 古い体質であった医療にも、着実にリノベーション(技術革新を伴う改革)の足音は迫っている。 

2050年からみた旭川・・・No.13 (2007年4月号掲載)

 この2~3年、異常気象や温暖化が表面化している。1年後の今日の天候を当てるのは難しいが、2050年のこの時期の気象状況は40億年の地球気象変化の分析から予測できる。ここで少し地球について考えてみる。内部のドロドロしたマグマと、岩石・水・大気の無機質からなる地球を古くはギリシャ哲学者やレオナルド・ダ・ヴィンチは人体の拡大モデルと見なしていた。それをジェームズ・ラブロックは、地球を一つの生命体(ガイア)とする考えにまとめあげた。その著作の中で人類に重大な警告をしている。自然を壊している人間の存在自体、人が地球により謙虚でなければならないはずである。他者への思いやりのなさと我がもの顔の勝手な振舞いは、ガイア(地球)から大きな仕置を受けることになるかも知れないと。
 第4次評価報告書の「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」で、地球温暖化の最大の脅威は気温上昇と水不足であると指摘している。
 2050年の気温上昇による40~60㎝の海面上昇はアジア全域の沿岸地域の水没、東京や大阪もその例外ではないという。またアジアでは10億人以上が深刻な水不足になり、飲み水ばかりでなく農業用、工業用も半減すると予測される。京都議定書を無視できなくなったブッシュ大統領は、この度の一般教書演説で環境問題で避けていた地球温暖化に触れずにはいられなかった。IPCCによると二酸化炭素濃度が500ppmを超えると最悪の事態になるという。そしてそれは今のままなら50年以内に現実のものとなると警告する。
 地球は、全てに優しく我慢強く対応し再生力もある。その寿命は100億年であるが、英国の地球物理学者ホーキングは、このまま人類が思慮ない行動を続けるなら1000年はおろか500年の保証も難しいと。
 ガスの排出削減ばかりでなく、水資源保全策も必要であり、ヒトがホモ・サピエンス(知恵ある人)かどうか今問われている。

 ・人口減少について(その1)

 人口減少は自然のままで、それに合った生活を考えていけばいいという学者がいるが、これは大きな間違いである。
BRICsに代表されるこれから世界経済をリードしていく国の要素のひとつに人口が多いことがあげられる。生産力・消費力からみても至極当然のことである。国の活力を見ても多いほうが有利で、人口の減少は低下に結びつくのが一般的な見方であろう。
 人口減少がもたらすのは、労働力不足、年金や社会保障などの財政問題であり旭川でいえば公共物の管理・維持が難しくなり、就業状況の悪化、医療・福祉サービスの低下から安心した生活の保障も充分ではなく活力が失われていく。ここで1950年から2100年の旭川の人口推移とその構成を見ていただく。

図1

(慶友会企画室)

  出生率を今と変わらずに推計すると、図1のように2050年では60%以下(20万人)に、2100年では今の人口の5分の1以下(6万8000人)に減少する。
 これらの数字は旭川が到底中核都市としての条件を満たさないことを示している。さらに人口構成でみると(図2)、出生率は現在のものであるが何も手を打たなければそれ以下になる可能性がつよい。だから実際は以下に述べることと合わせるともっと厳しい数字になる。2006年は、たまたま団塊ジュニアで出生率は全国的に少し上がったがこれは例外的事象。

図2 旭川の人口構成

(慶友会企画室)

 図2にみる底辺の長さが出生数で、これが年々短くなる。2100年の出生数をみるとほぼ絶望的に短い。労働人口は旭川に産業が同じようにあり就労人口が保たれることを前提にしており、実際には大都市に流出するのでもっと少なくなるだろう。
 実質の就労人口を20才から64才としてみると、2000年62%、2050年には46%に下がり、現行システムが存続できる状態にはないことを示している。
 大都市流出は事実として数年前からみられる現象である。東京都では出生率は1.0を割っているにかかわらず流入が増え全体としては人口増となっている。この傾向は横浜・名古屋・大阪などの大都市でみられる。北海道・東北・四国・中国地方では流出が多く減少し、今後はこの傾向がさらに強くなると予想される。
 つまり人口は大都市に集中し、地方の過疎化・空洞化は加速されるのである。
 導入されようとしている道州制は地方自治体の自立を原則としており、地域間の差は今以上にはっきりしてくる。現状を格差などと表現できないほどの地域差となり、知恵と実行力があり行政能力に長けた自治体では市民は裕福に安心が得られ、そうでないところは夕張以上の惨めさのなかで苦悩しなければならなくなる。
 北海道では、札幌だけが一極集中で恩恵に浴するが、このままでは2050年を待たずに旭川の都市機能は働かなくなるだろう。
 シャッター街で表現され空洞化した地域にならないためにも、ここで真剣に旭川を考えなければならない。
 旭川を今以上に盛り上げる方法・対策は必ずある。知恵をしぼりいい案を出して、まず「やってみる」ことから始めよう。

 次回はその具体案を提示したい。 

2050年からみた旭川・・・No.14 (2007年5月号掲載)

 人口減少は国の活力の低下に結びつく。ここまで経済的に成熟した日本では池田内閣の所得倍増は望むべくもないが、Goldman Sachsの調査によると国内総生産(GDP)で、2015年には中国に抜かれ、2030年にはインドにも追い越されると予測している。この予測では先進国アメリカもそれなりに伸びており、日本だけが平坦である危機感をより強く受け止めるべきだと思うのだが(図)。
 最良の人口増対策が選択されたとしても、その効果が経済に結びつくのは30年後とすると、まさに平時のことではなく緊急を要する非常時といえる。人口増対策こそ最優先すべき国家戦略として早々に実行に移さなければ時期を逸し再び浮び上がることはできないだろう。国は図体が大きい分だけ動きが鈍くなるのは仕方がないことで、中核都市旭川はその気になってやろうと思えばかなりのことができる筈である。まず率先して、出来ることから始めたらいい。

 ・人口減少について(その2)

 出産・育児の援助金について (その1)

 出産にかかる費用は、定期健診代、出産準備費、分娩・入院費、行事費など総額89万円(平均)に対して国からの援助は35万円の支給だけ。旭川は生活保護者以外は特別に支給されていない。
 やろうと思えば差額54万円の支給で旭川市は年間15億円の持ち出しで済む。(平成18年 2,714人出産)
 児童への援助金は、国からの支給は12歳(小学校終了まで)で3歳未満は月当たり1万円。 詳しいことは省略するが、その支給額は、

1人の子供の場合 96万円
2人の子供の場合 192万円
3人の子供の場合 348万円

 旭川市からは、母子家庭に支給される児童手当、入学祝金(小・中・高)はあるが原則としては無いという。 もし高校卒(18歳)まで国と同じ支給をしたとすると(平成12年の旭川で18歳までは65,948人)年当たり55億円の支給で充分。これで旭川市の少子化に対する意気込みを市民1人ひとりに感じてもらえれば、年間70億円(15億円+55億円)の投資以上の効果が確実に見られる。
 全国的にみてもこんなに旭川が子供の出産・育児に熱心なら、産んでみようかと思う夫婦は必ずでてくる。2030年に中核都市の条件を満たさなくなったり、2050年には見るも哀れな人口構成グラフ(先月示した)から解消され、勢いづく切っ掛けになることは間違いない。
 宮崎県のそのまんま東知事にみられたようにマスメディアが取り上げてくれたなら、動物園に次いだヒットをまた旭川で出せるかも知れない。
 お金だけで出産率が増えるかどうか疑問視する人もいる。
 フランスは先進国で少子化対策に成功した国として参考にされている。日本との違いは二点。
 その1つは、児童手当や育児休業中の賃金補助を手厚くする政策を実施した。日本の少子化対策予算は3兆7000億円。フランスの手法をそのまま取り入れたとすると10兆6000億円が必要になる。
 今の予算の3倍になるが、これは消費税3%に相当する財源が必要。
 今直ぐにできることは社会保障の配分で、出産・育児を増やすこと。その分、高齢者への支給は少なくなるが、将来を考えるなら検討の余地はある筈である。2025年の医療費が厚労省の計算で、141兆円(1994年発表)から65兆円(2006年発表)さらに改革すれば9兆円は圧縮できるほど甘い見通しというなら、日本の100年の計を考えて年7~8兆円の投資を惜しんでどうなるのだろう。今の日本の経済状況なら難しいことではない。この政策が1990年に1.65だったフランスの出生率を2.0以上に上昇させた。その2つめは、婚外子の問題。日本では子供は正式な夫婦の間で生まれ嫡出子を指していう。昔は結婚して子供が生まれるまでは10ヵ月はかかっていたが、今は「できちゃった婚」で6ヶ月であるという。 98%は嫡出子でわずか2%が非嫡出子。婚外子の権利は相続権も含めて法的にも保護されていない。これは愛人の子より正妻の子の権利を守る目的で作られた規約だから当然のことだった。一方欧米では婚外子であろうが法的差別がほとんどないので、スウェーデン56%、フランス44%、イギリス43%と非嫡出子の割合がいずれも高く、婚外子の増加が出生率回復と連動している事実がフランスの例ではっきりした。だから日本でも直ぐに法改正をして少子化対策にとは文化の違いもあり一概には云えない。中絶率でみると、表に出ている数字が31万(実際はこの5倍以上か)、終いには「赤ちゃんポスト」まで出ている現在、婚外子の権利を認めることに躊躇することはないと思うのだが。世の中には、何ともわからない理屈で騒ぎたてる何とか先生(女性)みたいなのが居るので困ることはある。いずれにせよ、打てる手は全て打つぐらいの気構えがなければ乗り切れるものではない。25年前には禁煙などについて旭川市に提言したことがある。全く問題にされなかった。 昨年は商工会議所を通じて、鳥インフルエンザについて申し入れた。 反応はあったと思う。 この度は、少子化で是非とも中核都市旭川が、理解ある認識を示してくれるように期待している。 

2050年からみた旭川・・・No.15 (2007年6月号掲載)

 少子化対策に成功した国について検証する。参考文献は島田晴雄・渥美由喜共著の「少子化克服への最終処方箋」(ダイアモンド社)から得た情報である。
 先進国の出生率の動向を図表で見ていただく。アメリカ、フランス、スウェーデンが上昇しているのがわかる。ここで各国の福祉国家観を社会の基本単位つまり子育ての担い手は個人よりも家族を重視する上で、子育ての担い手は女性であることが多い「家族主義」と、個人を重視する、自立した男女がともに子育てを行う「個人主義」に分ける。ヨーロッパ圏は家族主義を基本とした保守的福祉国家観に分類されるが、家族政策では①保育サービスが少ない、②結婚、出産、育児を機に母親の大半が就労中断する「母親家庭保育型」のドイツでは図に示されるように出生率は下がっている。 一方フランスは同じ保守的福祉国家観を持つがその家族政策で ①手厚い児童手当など家族に寛大な所得移転、②保育サービスを充実させ母親の就労を支援する。フランスは2005年の出生率2.01と少子化対策に成功した。
 出生率の伸びているスウェーデンは高福祉国家で税金も高く、父親に育児を強制させるなど「男女共同参画」が行き過ぎているのでわが国には馴染まない。またアメリカは、余りにも市場重視型で、政府による家族への介入を排除する個人主義が徹底しており、参考にすべき共通点が少ない。
 日本は保守的福祉国家観だが、家族政策においてドイツに近い消極的なところがある。
 ここで参考にすべきは家族政策でフランスの「出生促進型」つまり出生・育児の援助金を解決すれば少子化対策の有効な手段に成り得ると考えた。
 さらに出生率の伸びているフランス、アメリカ、スウェーデンに共通したものがあった。それは女性の社会進出で、従来これは女性の晩婚化などから少子化の原因の1つにあげられていた。ところがこれらの国の女性進出が対男性比70%になると一時的には少子化は進むがその後回復し出生率が伸びているという現象が確認されている。
 日本は2004年に女性の社会進出が70%を越えた。出生率の将来は打つべき手を打てば悲観的ではなく、確実に明るい兆しが見えているのである。

  

 ・人口減少について(その3)

 出産・育児の援助金について(その2)

 平成16年12月24日少子化社会対策会議で、「少子化社会対策大綱に基づく重点施策の具体的実施計画」が中核市向けに出された。特権は

1.児童相談所の夜間対策案の体制整備
 夜間休日における連絡や相談対応の確保、中核市規模の人口を有する市での設置の促進、分室・支所の活用による市町村の支援体制の確保等を図る。

2.母子家庭等就業・自立支援センターの設置
(3.4は省略)
 財源比率の割合が中核市になれば都道府県と同じ扱いになるので厳しいが、その分国から補助が出るかたちにもなっている。現実をどう認識するか。少子化対策に本気で取り組むつもりがあるのか。今までのように、「現実的に予算の面で極めて厳しい」 と言い続けるか。どんな政策も先見性をもち現状打破してやるリーダー無くしては何事もできない。

 前月提案した年間70億円が捻出可能かどうか検討した。 先ず、中核市の予算配分の一部を比較する。特別会計のうち、

1.国民健康保険事業 主に医療の給付に使用される

 旭川市   417億5969万円 (14.2%) 人口 35万8千人
 長野市   309億9740万円 (11.5%) 人口 35万9千人
 いわき市  370億4298万円 (13.3%) 人口 35万1千人

 旭川市の国民健康保険事業は、総体40~100億円高い額になっている。

2.老人保健事業

 旭川市   375億2531万円 (12.8%)
 長野市   312億8600万円 (11.6%)
 いわき市  345億6654万円 (12.4%)

 これについても旭川市は押し並べて20億から50億円ほど高い。 しかし出色は一般会計の扶助費である。

3.扶助費

 旭川市   366億3470万円 (24.7%)
 長野市   167億1689万円 (12.7%)
 いわき市  200億5521万円 (16.3%)
 秋田市   201億6916万円 (17.8%) 人口 33万1千人
 下関市   208億8241万円 (19.0%) 人口 28万8千人

 旭川市の扶助費は他の中核市に比べて突出して高い。この内容をみると、生活保護費187億5800万円(12.6%)で、これが扶助費 を上げている最大のものであることがわかる。
 わが国の生活保護についてみると、総額2.5兆円のうち被保護世帯の医療扶助費が51.9%、日常生活のための経費は45.7%(生活扶助33.5%、住宅扶助12.2%)で、医療支出に充てられる経費が半分以上を占めている。また医療扶助を除く経費の7割が高齢者と疾病・障害者世帯に充てられているという推計もある。就労可能性が高いと考えられる受給世帯は2割以下と推測される。
 ここで旭川市に話を戻す。その会計当初予算総括表扶助費をみると、国の生活保護給付と少し懸け離れているように思われる。
 生活保護の対象となる基準をはっきりさせて、就労可能者には就労支援で対応していくなど福祉事務所とハローワークがもっと活用されるべきであり、基本的に一考を要する。
 高齢者重視施策は充分理解できるし、決められた予算の中で、何もかも満足がいくような配分はない。しかし世界との比較でみると、児童・家族給付がいかにも少ない。GDP比でみると、日本は0.4%と一番低い。他の先進国はアメリカ0.6%、イギリス2.1%、ドイツ2.8%、フランス2.8%、福祉国家スウェーデンは3.5%である。高齢者に9、子どもに1の公的資金配分が、7対3になると、少子化解消に大きなインセンティブを持つのだが。
 旭川市も、予算がないのではなくその給付配分を充分見なおすところに来ている。年間70億円の投資が可能なら、フランスの例を出すまでもなく出生率は必ず上がる。その捻出も可能性があることを実際の予算配分を、中核市と比較して探ってみた。
 少子化対策の国の方向性・方針ははっきりしている。しかし動き出すまでに図体が大きい分だけ複雑な手続きと時間を要する。
 中核市旭川なら国に比べて素早く反応することも出来る。30年先を見るなら、今直ぐにでも打てる手は全て打つべきだと思うが如何だろう。 

2050年からみた旭川・・・No.16 (2007年7月号掲載)

・人口減少について (その4)

 少子化について、出産・育児の経済援助が必要条件であることは既に述べた。
 内閣府のアンケート調査をみても少子化対策に重要なのは経済支援で70%と高い数値を示している。ローマ帝国の興亡を描いた塩野七生さんは「少子化に本気で取り組むなら中途半端でなく、子ども4人いれば手当だけで食べていける位に徹底的な経済支援をすべきだ。また子どもが2人以上いれば、それだけで会社で1階級昇進させる。何故ならたくさんの子どもを育てられる親は能力があって仕事もできるから。」という。
 また欧米では既に企業が働く母親の環境をワーク・ライフ・バランス(WLB)キャンペーンを張り助成を厚くしている。それが結果として出生率の上昇に結びついている。日本でも経団連の御手洗富士夫会長が既婚女性の就業率7割以上にする指針など、企業姿勢について国に提出し、企業としての援助体制も整いつつある。

 2050年には、地方の人口は2/3に減少し、過疎地だけで九州に匹敵する面積が出現する。しかも人を集約しなければ地方自治の経営は成り立たないので、栄える都市と誰も住まない地域に二極化する。
 この現象は別に欧米では珍しいことではなく、アメリカを車旅行すれば散見される。しかし、群をなして生活する農耕民族のDNAをもつ日本人が、そんな極端な状況を受け入れられるかどうかである。
 特に人口密度の低い北海道で、道州制が布かれると全体の10%の公共事業費はなくなり、札幌一局集中で周辺は蝦夷鹿と羆の居住地にならざるを得ない。
 少子が最重要の危機管理対象となるかどうかは旭川市の発展・衰退に大いにかかわりがある。
 1941年に、人口の永続的な発展増殖と資質の向上を図るために、国は子ども5人を目標に産めよ殖やせよ作戦をとった。しかしその7年後には人工妊娠中絶の優生保護法をとり入れた産児制限策が出産ブームに終止符を打った。国は右往左往し確固不抜とした信念のもとに政策を継続しなかったことに今の少子化の原因があるという人もいる。しかし今さらそんな古いことを持ち出しても仕方がない。

 2006年には6年振りに出生率が上がった。その理由のひとつは団塊ジュニアが出産年齢にあること。(図)またこの図から就業年齢(15~64歳)が2050年には50%以下になること、加えて65才以上が全体の40%を占めることに注目してほしい。次いで、景気がよくなり結婚する人が多かったこと。「人口を増やすにはどうしたらいい?」と小学生に聞くと「赤ちゃんがどんどん生まれたらいい。」と。正に日本では婚外子が認められないので結婚する人を増やすしか少子の直接策はないのである。


なかなか結婚が増えない理由は何なのか?

① めぐり合う機会が少ない
  ② 経済的な理由
  ③ しがらみの中で生きていくのは面倒

 アンケート調査でみる限り、結婚したくないという人は少ない。家庭的な安定を求める気持はあるが、今の生活を壊してまで踏み込めない。お見合いも少なくなったし、最近では職場結婚も減っているという。(経済同友会人口減少社会を考える委員会 2005年)
 有能な女性社員が増えており今の条件を捨ててまで結婚に踏みきれないという人が増えている。また結婚と同時に姑・小姑のことが持ちあがる。介護で心身が疲れるほど苦労をしている親や周りをみているので敬遠してしまう。

 そもそも結婚は、先行きのはっきりした保障はなく現状を壊して成り立つもので多少の不安は当然ある。しかし一緒に居たい、子どもを産んで仲良く賑やかに暮らしたいという気持があって成り立つもので打算からスタートするのは間違っている。夢みたいな理想の夫婦なんて有りえないと思ったほうがいい。世の中小利口になりすぎて、女性は見極めが、男性は諦めが早くなりすぎたのではないか。
 何にしろ景気が良くなることしか結婚を増やす原動力がないというのは如何にも寂しい。結婚は生活を豊かにし、子どもはそれに華をそえてくれるものである筈だ。

 日経新聞に「生物種の繁栄のカギは、おばあちゃん-。」というおばあちゃん仮説が興味をひいたので紹介する。
 一般に哺乳類の寿命は繁殖能力を失う時期と一致する。つまり生殖機能がなくなると、種にとっては無用の存在だからそろそろ死んでもらいましょうというのが一般的。その例外のひとつがヒト。ここで総合研究大学院大学の長谷川眞理子教授は「子どもを産まなくなったおばあちゃんが人類の進化史で重要だった。おばあちゃんの存在がヒトの寿命を延ばし、人口を増やすきっかけになった。おばあちゃんが母親にかわって子育てをし、食料採取や危険の察知など経験豊富な知識が役に立った。こんな助けがあるから母親は安心して次の子どもを産めた」と、だから人類の祖先が子孫を増やしたのは、おばあちゃんのおかげだったという。では気になるおじいちゃんは?
 オスは高齢になっても生殖能力が残っており品行に難のある人もおり、長谷川先生は未だ仮説をたてるまでに至っていないらしい。 

2050年からみた旭川・・・No.17 (2007年9月号掲載)

「人口減少」

 4回にわたって人口減少のもたらす危機とその対策について述べてきた。
 日本商工会議所は少子化対策について「政府は政府資金の投入を惜しむべきでない」とし、子育て支援をする企業に政府が税制、財政、金融上の優遇措置を講ずるように促した。
  また、ここで度々指摘した人口の偏在化がはっきりと証明された。総務省は「東京、名古屋、関西の三大都市圏の人口が日本総人口の半数を上回ったと報告し、二極化が鮮明になりこの傾向は今後も継続していくだろう」とコメントしている。その功罪をみると、集積される人口は経済成長には確かに効果的であるが、その反面人口がより過密になり都市にみられる出生率の低下をすすめることになる。一方農村地域では過疎がすすみ、継代存続は難しくなる。現在でさえ高齢化は40%を優に越え、農業に携わる60%が65才以上の高齢者であるのに。

 人口減少はいろんな角度から深めた議論が必要だが、ここで一応のまとめとしてThe Economist 2007年7月28日号の「日本少子高齢化(Japan’s changing demography)」を要約して紹介する。
 その書き出しは「日本の人口は急速に高齢化し減少しつつある。それはあらゆる制度に影響し、さらに政府の命運を決めるかもしれない。」からはじまる。
 高齢化については、第2次大戦直後は65才以上の日本人は5%で、英国、フランス、米国を悠々と下回っていた。今日は平均寿命も1947年の50才から急上昇で82才まで延び、高齢者も20%。団塊の世代が引退し始めた今年から急激に増え2015年には25%、3000万人以上になっているだろう。
 出生率は1970年初めに2.0を割り、2005年には1.26にまで下がった。幸い昨年は1.32に上がったがこれを回復とは誰も見なしていない。日本の人口は、平均寿命の伸びにもかかわらず、2005年に絶対数で減り始めた。2050年には全人口は9500万人と1億を割り、そのうち高齢者は40%を占めると推測される。
 年金については、現役世代が引退世代を支える仕組みになっている。人口の減少はすでに労働人口に影響を及ぼしている。20代の人口は今の1600万人だが10年間で300万人が減ると推測され日本が高齢化し縮小するほど現役世代にはきびしい負荷となる。このままの出生率でいけば、2030年には現役者2人で引退者1人を支えなければならず、2050年には、3人で2人を支えることになる。
 現役世代は将来そんなに多くの引退者を支え得るか?現役の若い働き手は、そうは思っていないようだ。彼らの5分の2は、国民年金の保険料を支払っていない。このことは彼らが自分たちが引退するときには年金制度は破綻しているだろうと考えていることを示唆している。どんな年金制度を考えても、それを支える世代の賛同のないものは成立し得ない。だから社会主義国家でこそ成立可能な社会保障制度は今のままでは継続は難しい。
 しかし今、この「カイシャ」の雇用・定年制度が人口減少に追いつくだけ速く変わっていないし、さらに大きく伸びた平均寿命に対応していないと慶応大学の清家篤教授は指摘する。
 手短にいえば、定年年齢を70才に引き上げるか定年制そのものを全廃すればいい。高齢従業員はもっと働きたいと望んでいるのだから能力・業績に対応するシステムにすれば可能だろう。さらに出産で仕事か家庭かの選択でやめていった女性には、就業時間に配慮するなど条件面の整備をする。国も積極的に保育施設や育児援助をすれば女性は必ず職場に戻ってくるし、その傾向はすでにみられている。女性は優秀であることはあらゆる面で証明されており、能力で男性に劣ることはない。むしろその逆か。その割に「カイシャ」での評価が低く管理職の女性は米国の46%に対し10%以下と差がある。これは大きな損失である。
 WLB(ワーク・ライフ・バランス)は潜在化している能力ある女性を「カイシャ」に迎え入れ、その能力を発揮してもらうことで企業にもプラスになると小泉内閣の少子化特命大臣を務めた猪口邦子氏は言う。
 人口減少解消からみても、内閣府の調査では18才~34才の女性の10人に9人は結婚を望むだけでなく、子どもを2人持ちたいという。
 これらの条件を満たすだけで出生率は1.75まで跳ね上がると計算されている。
 さらにOECDは多産と女性の就業には明確な相関関係があると指摘している。つまり女性が報われる仕事に就きやすければ易いほど、子どもを持つことを考えるようになると。

  給与所得者の年金の受給資格も60才から62才に引き上げられ、2014年までには65才になるという。
  70才定年さらには定年なし、女性社会進出が実現すれば現役世代にそんなに負担をかけなくともいいし、需給年齢を70才に引き上げてもいいのかも知れない。現在の年金貯蓄は150兆円あるが、それを10%で運用すれば15兆円だから、これだけで消費税6%に相当すると指摘する人もいる。今までの社保の組織自体が悪すぎた。新しく組閣して根幹からの見直しをするという安倍首相に期待している。100才長寿時代といわれている。生涯現役の気構えでオールデスト・オールドの凛としたところを若者に見せたいものだ。

 The Economist は世界中で最も読まれている経済誌だが、普段余り目にする機会はないと思う。たまたま日本の人口減少をとりあげていたので私見を交えながら紹介した。

2050年からみた旭川・・・No.18 (2007年10月号掲載)

 改めてがん検診のすすめ

 がんは不治の病ではなく、早期に見つければ治る人も少なくない。がん治療の成績を「5年生存率」つまり、がん発見後5年を経て何%の人が生きているかで表わすと、40%以上が治るようになった。30年前には、見つけた時点でもはや手遅れといわれていた食道がん、肝臓がん、白血病も医学の目覚しい進歩のなかで治る人が多くなった。
 しかし残念ながら、膵臓、胆のう、肺がんは依然として5年生存率20%以下の難治性がんといわれている。  日本人間ドック学会がまとめた昨年の人間ドック受診者は295万人で、「異常なし」と判定されたのは11.4%と過去最低だった。そのなかで6817人(0.23%)にがんが発見された。一般的な健診*でがんを見つけるのは容易ではない。
 その理由は、がん細胞は60兆個の細胞からなる身体のなかでたった1個の細胞のがん化から始まる。その1個のがん細胞が20年の歳月をかけてやっとCT、MRIで塊として見つけられる大きさまで成長する。今の医療技術ではそれ以前に見つけるのは難しいので早期に見つけたがんとはいえ、一生の四分の一はがんと一緒に生活してきたのである。
また、がんの遺伝子も一種類だけではなくいくつかの遺伝子がかかわり合いさらにタバコ、食べ物、アルコールなどの環境因子と合いまってがんができる。将来、がん遺伝子がつくり出す物質を血液で見つけたとしても、それだけで実際にできているがんの全てを見つけることは難しい理由はここにある。
 今のところがんを早く見つける方法にどんな検査があるかを、ここで挙げてみる。

*健診と検診の使い分け 「健診」は健康の維持・管理・増進を目的として行われるもので、特定の疾患を念頭において行うものを「検診」という。

図1:CTスキャンで撮影した胃
男性82歳、胃がん(吉田病院提供)

 

図2:CTスキャンで撮影した大腸
女性34歳、大腸がん(吉田病院提供)
下行結腸から結腸S字状結腸移行部に狭窄

 胃がん

 通常はバリウムを飲んでレントゲンによる検査か、胃カメラで行われる。ただ喉が敏感で胃カメラの管(くだ)が入るときの辛さだけで嫌だという人がいる。その胃カメラの管も従来の半分の太さ(直径5mm)になり、しかも鼻から入れるので苦痛はほとんどなくなった。胃カメラを受けながら会話もできるので、今までの悪い印象で胃の検査を敬遠される人にすすめたい。 それでも管を見るだけで嫌だという人には、一切バリウムも管も使わずにCTだけで検査できる方法がある(図1)。これはマルチスライスCTで撮影した胃の中で、矢印はがんを示している。

 大腸がん

 便を採って血が混じっているかを検査する潜血反応。バリウムを肛門から入れてレントゲンあるいはファイバースコープ(管)を用いて直接見る方法がある。この検査は、1度受けたら2度とやりたくないというほど苦痛を訴える人が結構いる。
苦しくもなく時間も短縮され検診に適した方法がCTでできる。胃の時と同じ手法で肛門から少しの空気を入れる手間はあるが大腸を検査できる。結果は図2に示す。丸で囲ったところが狭くなった大腸がん。

  検査はそれが苦痛や、危険を伴うものであっては困る。CTは苦痛は伴わないが、放射線を浴びる欠点はある。しかし頻回でなければ特に問題はない。
  超音波検査はその性能も良くなり、肝臓、胆のう、腎臓がんに適している。膵臓には決め手になる検査はないが、超音波検査やCTが一般に行われる。
 女性では子宮がんに細胞診、乳がんにはマンモグラフィー、超音波検査。男性での前立腺がんにはPSA検査をすすめる。これは簡単な血液の検査でわかるので、40才を過ぎたら年に1度定期検査の中に組み入れておくのがいい。
 PET検査はがんの万能検査のように宣伝されているが、放射線物質を使うために検査料が非常に高く、早期のがんを検出できるとは限らない。他の検査と合わせて補助的にはいいが過信しすぎないことが肝要である。
 近年がんが増えたようにいわれるが、これは寿命がのびて高齢者が多くなったためであり、年齢調整でみるとむしろ減っているといっていい。
 生活習慣病のがん、心筋梗塞、脳卒中の最大の元凶は、いうまでもなくタバコである。
 喫煙者を減らす最良の策は、少なくとも1箱1000円にタバコを値上げすること。もし「健康日本21」の禁煙対策の時と同じようにタバコの値上げに反対する時代おくれの国会議員がいるなら、恐らく利権が絡んでいるので、名前を公表するぐらいのことはした方がいい。
 今できる最も効果的で確実ながんの一次予防はタバコをやめることであると強調したい。

2050年からみた旭川・・・No.19 (2007年11月号掲載)

 アメリカの疾病管理予防センター(CDC)がニューイングランド医学誌10月11日号に「健康の指南役」としてまとめた内容は、タバコ、アルコール、脂肪を減らすからはじまって身体を動かす、高血圧やコレステロールの管理から果物・野菜を多めに太り過ぎないことと月並みなもので終始している。
 実際に注意すべきは貝原益軒先生の江戸時代からほとんど変わっていない。多少最もらしく科学的肉付けがされただけで、今や誰でもが知っていることばかりである。
 要はそれを如何に実行し、継続し、習慣化するかにある。
ここで医療費削減のため「予防」をキーワードに国もはっきりと目標を提示した。4疾病つまりがん・脳卒中・心臓疾患と糖尿病。就中5大がん(肺・胃・肝・大腸・乳房)とその部位をあげて撲滅を図っていく方向を示した。  その主たる戦術は、国民の13%を占める糖尿病・その予備群にしっかりと焦点を当てた。
 この狙いは誠に当を得ている。世界の流れをみると、昨年12月に国際連合は糖尿病の合併症を世界的脅威として取り上げた。全世界の成人人口の5%(2億4000万人)の糖尿病患者と、さらに増えていくことを考えると、地球規模での対策は当然の成り行きだった。11月14日を「世界糖尿病デー」と制定し、ニューヨーク、北京など世界の主要都市でイベントがあると聞いている。日本でも東京タワーを糖尿病治療のシンボル・カラーのブルーでライトアップし注意を喚起する計画である。

 特定健診と特定保健指導

 特定健診(以下特診)・保健指導が実質的に国の目標にむけての始動になる。このシリーズでも取り上げたが、さらに具体的になったので経営者をはじめ従業員が熟知しなければ3~5年後の査定で大変な負担を強いられることになる。改めてここでもう一度取り上げる次第である。
 平成20年4月から、40歳~74歳の方は、加入している医療保険者が行う健診・保健指導を受ける事になる。内容は内臓脂肪型肥満を見つける為の腹囲測定などの項目が加わり、メタボリックシンドロームの該当者・予備軍をいち早く見つけられるようになる。その結果、内臓脂肪蓄積のリスクがある人は、状態に応じて生活習慣改善のための保健指導(運動習慣・バランスの摂れた食事の摂取)を受ける事となる。指導は携帯電話やメールを利用したり、夜間・休日も受け付けたり受ける人が継続出来るように配慮されている。継続がこの指導の鍵をにぎっているからである。
 実施義務が市町村から保険者に移り、専業主婦等の被扶養者も実施義務が出来た。「健康日本21」の目標達成に失敗した厚労省は、この特診・保健指導で挽回を期すところがあるのだろう。
 平成24年に目標設定がされている。その目標とは、健診受診率70%(現在45%)、保健指導の実施率45%、メタボリック症候群・予備軍の10%減少である。それが達成できない時のペナルティは、後期高齢者医療に対する保険者の支援金*が加算減算で最大20%の差額になる。
特診・保健指導の実体と具体的方法を、経営者、健康管理責任者は是非知って欲しい。
慶友会では、健康サポート室(0166-25-1115 内線2122、直通0166-25-9587 大西・西方)で説明に応じている。また無料で会社に出張し説明できるシステムも気軽に利用していただきたい。

  *後期高齢者支援金とは?

 平成20年4月から後期高齢者限定の新しい医療保険制度が創設される。この制度の財政負担をみると、全体の4割を若年者(0-74歳)の医療保険から支援金という形で拠出することが決まっており、これを後期高齢者支援金という。支援金は加入者1人当たりいくらという形で算出することになっており、医療保険者の大小に拘らず平等に負担する。(図)